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WEC 参戦記 2017 小林可夢偉編 vol.5
「表彰台に上がれなかったのは残念」

WEC 参戦記 2017 小林可夢偉編 vol.5 「表彰台に上がれなかったのは残念」

前戦ニュルブルクリンクのレースを終えてからWECとしては1か月半の間隔が空きましたが、その間にも自分自身は、国内や他カテゴリーのレースがあったので、しっかりレースモードは続いていました。それでもWECレースがないと気持ちも身体も早く戻りたいと信号を発信しており、メキシコのレースが近づくとワクワクしました。

ニュルブルクリンクの成績は3位でしたが、優勝したポルシェから1分以上離されたので、そのギャップをメキシコで取り戻すつもりでやって来ました。今シーズンを通して見ると、前半調子が良かったものの、スパ・フランコルシャン、ル・マンと結果が出ず、いまひとつ勢いが空回りした感じで、後半戦にはそれを立て直して頑張らねばと思っていました。クルマもニュルブルクリンクに比べるとメキシコのコースに合っているはずで、チーム全体の士気は高かったのですが...。

しかし、金曜日、土曜日に練習走行と予選を走るうちにグリップ不足が判明し、厳しいレースが予想されました。メキシコシティは海抜2300mの高地で、普段我々が生活している場所と比べると20%も気圧が低いんです。それが原因のひとつかも知れませんが、計算してきたダウンフォース仕様では足りなかったようです。例えば、リヤウイングを立てて応急的にリヤのダウンフォースを増やすという手段が考えられるかもしれませんが、そうするとクルマの前後空力バランスが崩れてしまいます。だから、現地に入ってからクルマの空力セッティングを大きく変えるということはできませんでした。
それでも細かい部分で何とかクルマを煮詰めていき、土曜日の予選のタイムはまずまずでした。今回、僕は予選を担当しませんでした。コース上は遅いクルマのトラフィックが多くてマイク(・コンウェイ)もホセ(・マリア・ロペス)も理想的な走りはできなかったようですが、ライバルのトップから2人の平均タイムで0秒2遅れただけですので、もしかしたら決勝レースではついて行けるかなと考えていました。

ところが残念なことに、現実はライバルについて行けませんでした。8号車に比べれば自分たちのペースの方が良かったんですが、ライバル2台と比べると全然駄目でした。苦戦でした。理由の一つは先にも言ったようにダウンフォース不足だと思います。一定レベルのダウンフォースがないとタイヤのグリップが出ません。そもそも用意したタイヤもこのコースに合ったものではなかったようで、余計にペースが伸びませんでした。グリップが出ずにタイヤも減らないので、3人目の僕の担当では、タイヤ交換なしに3スティント行き、ペースは回復しましたが、それでもライバルとのギャップはどうすることもできず、優勝車から1周遅れというのは何ともはや...でした。

最後のピットインで、マニュファクチャラーズ選手権の総合順位を考えて、まだタイトル獲得に可能性が残っている8号車に上位に入賞してもらうために、順位を入れ替えて我々は4位に甘んじました。すべてはチームワークですし、表彰台に上がれなかったのは残念でしたが、少しでも可能性があればそれを実現するのが我々の使命ですから。

次戦はオースティンです。ニュルブルクリンクやメキシコより我々のクルマに合ったコースだと思いますので、期待しています。例年、非常に高温多湿で、今年はハリケーンなども来て天候が不順なようで心配もあります。現地に行ってみないと状況は分かりませんが、良いレースをしたいと思います。

  • コースウォークをする小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ホセ・マリア・ロペス
  • 小林可夢偉
  • エルマノス・ロドリゲス・サーキットを走行するTS050 HYBRID 7号車
  • エルマノス・ロドリゲス・サーキットを走行するTS050 HYBRID 7号車
  • 小林可夢偉、アレックス・ブルツ、セバスチャン・ブエミ
  • 小林可夢偉
  • ピット作業を行うTS050 HYBRID 7号車
 

小林可夢偉編

      中嶋一貴編

          国本雄資編