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WEC 参戦記 2017 小林可夢偉編 vol.9
「レースで結果を出せなかったのは残念ですが、最速の証明が出来ました」

WEC 参戦記 2017 小林可夢偉編 vol.9 「レースで結果を出せなかったのは残念ですが、最速の証明が出来ました」

小林可夢偉です。まずは、1年間応援ありがとうございました。

バーレーン6時間レースですが、初日、木曜日の公式練習1回目は、まずまずの滑り出しだったのですが、その後のクルマのセットアップに苦労しました。どこかに明らかな不具合があるということではなかったのですが、ベストのクルマに仕上げることが出来なかったのが心残りでした。

今回の予選は、マイク(・コンウェイ)とホセ(・マリア・ロペス)がタイムアタックを担当し、僕は走りませんでした。最初にマイクがアタックした時点では、唯一、1分39秒台に入れて全体ベストでした。二人目のホセも結構良い走りでマイクと0.2秒差の1分39秒7。この時点の平均タイムは全体トップで、狙った通りのポールポジション獲得かと思いましたが、ライバル#2号車は、3セット目のニュータイヤまで投入して、3回目のアタックを敢行したため、逆転でポールポジションを奪われて2番手になりました。タイヤに厳しいバーレーンで、且つ、タイヤの使用本数制限がある中で、我々は、3セット目を投入してまでもポールポジションを狙う意味はないと判断し、2番手スタートで十分と気持ちを切り替えました。

このレースを最後にLMP1カテゴリーから撤退を表明しているライバルにとっては、最後の記念にポールポジション獲得が欲しかったのでしょうか? まあ、一番大事なのは翌日の本戦決勝なんですから、我々は本戦重視でいくことにしました。

その本戦決勝ですが、序盤からマイクがライバルを引き離し、ホセに引き継ぎ、中盤に入った時点で、同じチームの8号車と僅差の1&2走行を展開していました。中盤、3番手として僕が走り始めてすぐ、GT車両と接触してダメージを受けてしまいました。左コーナーでGT車両をインから完全に抜き去っていたと思っていたので、右から接触の衝撃を受けた瞬間、驚きました。ドライブスルーのペナルティーを取られたことは、僕に非があったということです。彼らには謝罪しました。この接触アクシデントで我々のTS050 HYBRIDのリヤ右側のカウルが壊れ、タイヤがパンクしました。緊急ピットインで修理し、約6分を失っての再スタートになりましたが、その後は車両のバランスが狂ったようでコーナーでリヤが出てしまうので、思ったような走行ラインで走ることはとても無理でした。最終的にトップから3周遅れでゴールしましたが、今シーズンを通して速さを見せたにも関わらず、再三のアクシデントに見舞われ1勝も出来なかった点は残念です。

今年を振り返って成績から見るとあまり褒められたものではないんですが、僕個人としては悪い年でもなかったかと思います。昨年と比べるとかなり成長したとの自覚もあります。最速を証明するポールポジションを4回も取れたし、3回もLMP1クラスのコースレコードを記録できたのは、ドライバーとしては非常に嬉しいです。

今年の僕のベストレースはル・マンになるところでしたが、あの偽オフィシャルの一件で台無しになりました。24時間レースで夜中まで気持ち良くリードを続けていましたが、結局あの事件がきっかけでクルマが壊れてしまいました。24時間レースではいろんなことが起きるので、あの事件がなかったら、最後までリードを守れていたかはわかりませんが、少なくとも勝てる速さは持っていました。

FIA世界耐久選手権(WEC)はチームのレースなので、8号車がシーズン最多の5勝も出来たことは素晴らしい結果だといえます。ただ、ル・マンは選手権ポイントが他のレースの2倍なので、そこで結果が出なかったためにタイトルを逃がしました。これが痛かったですね。ル・マンでポイントが取れなければ、選手権タイトルはとても厳しいんです。

このバーレーンで今年のWECは終了ですが、僕自身のトピックスとしては、12月に香港で行われるフォーミュラEレースに出ることになりました。WECもスーパーフォーミュラも終了しているので、トヨタから出場の許可をもらえたんです。ただ、フォーミュラEの参戦はこの1戦だけの予定です。来年もWECを続けたいと思っていますし、引き続きスーパーフォーミュラへの参戦も視野に入れているので、他のカテゴリーへの参戦は難しいと思います。日程が許せばもっと出てみたいですが。

ファンの皆様には、この一年間、様々な場所で多くの励ましの言葉を頂き、本当にありがとうございました。小林可夢偉は、来年も全力で頑張って皆様のご声援にお応えしたいと思っています。

  • TS050 HYBRID 7号車とチームスタッフ
  • バーレーン・インターナショナル・サーキットを歩くドライバーとチームスタッフ
  • バーレーン・インターナショナル・サーキットを走行するTS050 HYBRID 7号車
  • バーレーン6時間レース決勝を走行するTS050 HYBRID 7号車
  • 決勝レースを走っているチームメイトをモニターで見つめる小林可夢偉選手
  • トップから3周遅れの4位でレースを終えたTS050 HYBRID 7号車

小林可夢偉編

      中嶋一貴編

          国本雄資編