こう見えても、ワタクシ、新車を購入した経験はごくわずかなんです。
日頃、自動車メーカーがマスメディア向けに提供する広報車両をオーナー面して乗り回しているものだから、近所では“うさん臭いクルマ屋”か“陸送のアルバイター”なのだろうとウワサされているのだが、実態はというと、新車をつねに転がしてはいるものの、それは拝借しただけであり、数日もすれば手元から消えてなくなるもの。現実的な「新車を愛車にした歴」はごくわずか。自動車ディーラーで商談した経験など、ヤフオクを覗く頻度の数百万分の一ほどもないのである。
だが、そんなキノシタが昨年、新車購入の“商談”を経験した。
ターゲットは、泣く子も黙る「レクサスLFA」である。
世界500台限定の、あの「レクサスLFA」である。
3,750万円という天文学的な金額の、あの、「レクサスLFA」なのである。
そう、ワタクシは、“金持ち”になったのである!
…というのはまったくのウソで、いまだに新車購入は夢のまた夢。誤解した税務署員に痛くもない腹を探られても困るし、30年音信不通の同級生からすりすりと電話がやってきても嫌なので白状すると、ウワサで耳にしたレクサスLFA専用商談スペースを拝見させていただいたにすぎないのだ。
では何ゆえそんな暴挙に出たかといえば、仮にも自称「日本一のLFAファン」を公言し、さらには極秘である発売前のマシンをテストコースで走らせ、調子に乗ってレースにまで参戦したという、こんな他に類を見ないほどLFA経験豊富な男が、お客様の手に渡るシステムを知らぬとは自らのアイデンティティが許さなかったのだ。
そんなわけで、取材という名の疑似商談となったわけなのだが、エセ優良顧客とはいえ、至れり尽くせりの対応に腰を抜かしかけた。レクサス店の群を抜くプレミアム感はウワサには聞いていたが、スタッフの丁寧な応対、家具調度類の品の良さ、背筋が伸びる凛とした空気感などなど、さすがに高級ブランドを扱うだけのことはある。
しかも商談ルームはレクサスLFA専用エリアなのである。財布を覗けば、3,750枚もの1万円札束が詰まっているVIPとの商談なのだから、レクサスだって手を抜いていられないわけで、懇切丁寧な商談カリキュラムで対応していただいた。
“レクサスLFA専用商談ルーム”は、全国165のレクサス店の、いわば総本山といわれる“レクサス高輪店”の一角にあった。世界でもここだけだという。
エルメスでいえば、パリのサン・トレノ通りにある本店であり、パテックフィリップであればジュネーブ・ローヌ通りの本店の、その一角に専用のスペースがある、ということになる。
吉野家であれば、築地市場場内の本店であり、大勝軒でいえば池袋・グリーン大通りの本店であるわけで、それはつまり、つけ麺マニアが一度は池袋に足を運ぶように、国道15号沿いに神々しく鎮座まします総本山を訪れるのは日本一のLFAファンにとって夢だったのだ。
もっとも、一歩足を踏み入れた瞬間、自分のみすぼらしい身なりを恥じ、せめて寝癖くらいは整えてくればよかったと後悔したのは言うまでもない。
全国津々浦々にあるレクサス店は、どこでも最高級のクオリティを提供してくれるのだが、その中でもなぜかキノシタは“高輪店”を神格化してしまうから、当日、期待と重圧で震えてしまったのも許してもらいたい。
レクサスLFA商談の流れはこうだった。
(1) 2009年末までに、購入の意志を伝える。
(2) 2010年商談実施前に、「ニュルブルクリンク・パッケージ」もしくは「特別外板色」の希望確認。
その後、車両生産時期(予定)の決定
(3) 商談
商談は、専用ルームでの綿密な打ち合わせのあと、高級ホテルでのランチサービスが受けられるという特典つき。もちろんエセ優良顧客であるキノシタがガツガツと高級ランチを食して楊枝でシーシーするのも気が引けたので、丁重にお断りさせていただいた。そこまで私は図々しくないので…。さて、胃袋を満たしてからは、お台場のメガウェブでの体験試乗となる。そこで納得したのちに、3,750万円の契約書に調印することになるのだ。
ちなみに、レクサスLFAはトヨタの高級車を主に扱う元町工場の、その一角に設けられたLFA工房でつくられる。意欲ある熟練工の中の、面接や技能試験を突破した精鋭達が生産にあたり、1日の生産台数は1台だ。だから500台がすべて納車されるのは2012年末になる。
商談は、「1/6サイズの特注カラーセレクトモデル」を前にして行われる。
というのも、レクサスLFAの基本モデルは1車種のみである。V型10気筒4.8リッターエンジン+6速2ペダルマニュアルという基本構成はひとつ。だが、そのかわりに“着せ替え”の選択肢が無数に用意されているのだ。
標準カラーは10色。そこに、20色のオプションが加わる。2008年に僕がニュルブルクリンク24時間レースに参戦したときのマシンをモチーフにした“マットブラック(つや消し黒)”までラインナップする。中には、おそらく誰もオーダーしないであろうと思われる奇異な色彩も用意されているわけで、その中から好みの1台を選ぶとなると、カラー印刷されたチャートからだけで想像することは難しく、そのためにカラーセレクトモデルが用意されているというわけだ。
しかもレクサスLFAには、ステアリンググリップですら12色が設定されている。シートが12色。シートバックも12色。フロアカーペットが5色。フロアマットが5色。そればかりか、センターコンソールやドアトリム、あるいはインパネも12色から選択可能なのだ。しかも、である。ホイールが3色あり、ブレーキキャリパーですら6色。それを複雑に絡み合わせれば、たしかに世界で1台の自分だけのオリジナルLFAが出来上がるという寸法だ。
「1/6カラーセレクトモデル」がドデンと鎮座するテーブルを取り囲むように、全色に彩られたパーツが陳列されていた。それをひとつひとつ、白手袋をはめたエキスパートが組み込んでいく。オプションの数だけそれはあり、ボディはもちろんのこと、シートや内装やキャリパーまで取りつけては取りはずし、はずしては取り付けるのである。
デリバリーされるのは世界で500台であり、日本にはそのうちの165台が割り当てられる。だから、日常で見かける確率は低い。しかもレクサスLFAオーナーからして、信号待ちで同じLFAが横に並んだ、なんてことは、トイレに座っていたら隕石が天井を破って落ちてきた…に等しい天文学的な確率なのである。だけど、その奇跡が起きた時には、その数値をひっくり返したのと同等の気まずさになるわけで、そのためのオリジナル化なのだろうと思った。
実はその専用商談ルームの一角には、実物大のパーツが陳列されている。レクサスLFAの実践開発の場でもあるニュルブルクリンク24時間レースの写真も貼られており、そこにもワタクシの顔写真があったりして、気まずいことしきり。
しかも、レクサスLFAの商談には、専属のセールスマンが対応してくださり、肩書きは「LFAスペシャルコンサルタント」。
ドライビングスキルも高く、知識も豊かな担当者が懇切丁寧に対応するのだ。ニュルブルクリンク24時間レースにも参画しており、実は僕は彼を存じ上げており、彼も僕を覚えていてくださった。
「レースではご苦労様でした。いまさらキノシタさんにLFAの説明をするのも失礼なのですが…」
そう言って接客してくださった。
「何カラーのお客さんが多いんですか?」
「ボディは30色取り揃えていますが、やはり白や黒をお選びになるようです」
「ピンクは?」
「素敵な色合いだと思いますが、まだいらっしゃいませんね」
「だったら世界で1台の可能性が高いぞ!」
自ら走らせている姿を想像しながらアレヤコレヤと仕様を決める作業は楽しい。その感情は、カタログをペラペラとめくっているときの、あの心地良さからも想像できる。しかも対象がレクサス至宝のスーパースポーツカーなのである。踊る心をなだめるのは不可能だろう。ある意味では、納車されたあとよりも興奮する、至福のひと時かもしれないのだ。それが、新車を買うものに許された特権なのだ。
いやはや、難問ですね。GRMNをドイツに運んで実際に走らせているけれど、ラップタイムの計測はしてないからね。はたして何秒で走りきれるのだろうか?僕も知りたいですね。
1周20kmの旧コースだとして、世界最速軍団が7分30秒あたりがレコード。レクサスLFAのレース仕様で6分台。勝手に予想すると、『11分!』くらいじゃないかなぁ。
あのコースは超過激なだけでなく、超高速コースなんだよね。ほとんど200km/hオーバーで走らねばならない。だから、はっきり言って、小排気量の「iQ GRMN」には不利な状況だよね。もともと、タイトコーナーを小気味良く走れるように開発しているわけだしね。だから、レクサスLFAとの差は歴然です。
ただし、ジムカーナのようなコースを走らせたら、「iQ GRMN」がGT-Rを抜いたりするかもね!
ふくふくさん、「iQ GRMN」との生活を楽しんでますか?
ニュルブルクリンク24時間レースに向けての実践テストも順調。仕上がりも上々で、かなりの手応えを感じている。気になるのはチームワークのこと。監督のアキラはニーチェみたいだし、寿一はハシャイでばかりだし、石浦は子供のことで気もそぞろだし、大嶋は一切連絡ないし…。個性的なメンツなので、てんでバラバラなんですわ!(笑)
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【編集部より】
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